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感染症学講座 微生物学分野

感染症学講座 微生物学分野

感染症学講座 微生物学分野

講座について

本講座は1973年9月の旭川医科大学開学と同時に細菌学講座として開講し、当時北海道大学医学部で助教授をされていた東匡伸博士が初代教授として着任されました。開学当初は市立旭川病院旧病棟に研究室を構えており、水野文雄講師と吉田逸朗助手の3名でスタートしました。翌1974年には、本学中央研究棟(現教育研究推進センター)へ移り、その後、基礎臨床研究棟4階(現総合研究棟)に移転しました。教育は主に微生物学と免疫学の講義と実習を担当し、「ウイルス感染に対する生体防御」をテーマとして研究が進められました。2000年3月に東教授が定年退職されたタイミングで同年4月に微生物学講座へ改称されました。二代目として、2000年11月に若宮伸隆博士が大阪大学微生物病研究所から二代目教授として赴任されました。若宮教授は「生体防御因子コレクチン」の専門家であり、2009年8月には講座内に抗酸化機能分析センターを設立し、地域に寄り添った「食と健康」に関する研究を展開されました。2013年3月に吉田逸朗准教授が定年退職し、大谷克城助教が准教授に昇進しました。2018年3月に若宮教授と大谷准教授が酪農学園大学に転出され、助教であった松田泰幸らが講義や実習を引き継ぎました。それから4年間、教授不在の期間を経て、2022年4月に原英樹博士が慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室より三代目教授として赴任しました。2023年3月に北海道大学遺伝子病制御研究所から山内肇が助教として着任しました。2023年4月に現在の感染症学講座微生物学分野に改称され、感染症問題の解決に向けて、微生物学、免疫学、分子生物学的な研究に取り組んでいます。

教授挨拶

人流が活発となった現代では、薬剤耐性菌や新型ウイルスなど感染症は瞬く間に世界規模で蔓延します。このような感染症に対応するためには日頃からの基礎および臨床研究の積み重ねが重要となってきます。私たちは、感染病態の解明と既存法に置き換わるような斬新な感染治療法の提案を目指して、病原体と免疫細胞、常在菌などの相互作用に着目して研究をすすめています。日々出現する新たな病原体に立ち向かい、“人類最大の脅威”ともいわれる感染症の克服を目指して、ともに新しい世界を切り開きましょう。

出身大学や学部を問わず、学部生、大学院生、研究生、ポスドクを受け入れています。筆頭著者として国際的学術誌に論文を発表することを念頭に指導しますので、研究に関心のある方は遠慮なくご連絡ください。

また企業との創薬を目指した共同研究にも注力しています。感染症はもちろん、免疫が関わる他の疾患にも応用ができますので気軽にお問い合わせください。

連絡先:hhara[at]asahikawa-med.ac.jp(原)[at]は@に置き換えてください。

スタッフ紹介

教授

原 英樹ハラ ヒデキ

助教

松田 泰幸マツダ ヤスユキ

助教

山内 肇ヤマウチ ハジメ

技術職員

石井 育子イシイ イクコ

技術職員

坂本 陽サカモト アキラ

教育

医学科講義

  • 第2学年「医学チュートリアルⅡ」
  • 第2学年「免疫学」
  • 第2学年「微生物学」
  • 第2学年「基礎医学特論」
  • 第3学年「生体構造機能蛋白・病態解析コース」
  • 第4学年「医学研究特論」

医学科実習

  • 第3学年「微生物学実習」

看護学科講義

  • 第2学年「感染制御学」

大学院講義

  • 先端医学特論「感染症と免疫応答」
  • 基盤医学特論「化学発光による検出とその応用」

研究

主な研究テーマ

グラム陽性菌の毒素

細菌はグラム陽性菌と陰性菌に大別されます。グラム陽性菌は多様な病原機構を有しており、様々な種類の毒素を産生することで病原性を発揮します。例えば、膜傷害毒素の主な機能は細胞膜に孔を形成することですが、それだけでなく様々な生物活性を有することが近年の研究から明らかになってきました。当研究グループでは、リステリアが産生する膜傷害毒素が感染宿主細胞のリン酸化酵素を活性化することで特異的な炎症応答を亢進し病原性に加担していることを報告しました(論文参照)。このような病原毒素と宿主細胞との相互作用が感染病態に与える影響を分子レベルから解明することを目的として研究を進めています。

論文:Tanishita Y, Sekiya H, Inohara N, Tsuchiya K, Mitsuyama M, Núñez G, *Hara H. Listeria toxin promotes phosphorylation of the inflammasome adaptor ASC through Lyn and Syk to exacerbate pathogen expansion. Cell Rep. 2022, 38, 110414. *Corresponding author

感染症を重症化させる免疫応答

病原体が感染すると免疫細胞は異物として認識し炎症応答を誘発します。病原体を認識する受容体は細胞表面や細胞内に発現していますが、細胞内受容体を活性化するのは基本的に病原菌に限られます。当研究グループでは、リステリアや黄色ブドウ球菌などが細胞内受容体を介してインフラマソームとよばれる炎症応答を惹起し、感染病態を重症化させていることを報告しました(論文参照)。どのような微生物因子がこのインフラマソーム応答の活性化および制御に関わっているのか、また、どのような機構でインフラマソームを介した炎症応答が宿主を死に至らしめるのか解明することを目的として研究を行っています。

論文:*Hara H, Seregin SS, Yang D, Fukase K, Chamaillard M, Alnemri ES, Inohara N, Chen GY, Núñez G. The NLRP6 inflammasome recognizes lipoteichoic acid and regulates Gram-positive pathogen infection. Cell 2018, 175, 1651-1664. *Corresponding author

薬剤耐性菌問題への対策

感染症における重要な医療問題の1つとして薬剤耐性菌の蔓延があります。国際的にもサイレント・パンデミックが問題視されていることから、抗生物質に代わる革新的な治療方針の転換が危急の課題となっています。ファージや抗菌ペプチドなど菌体を標的とする治療法が展開されるなかで、当研究グループでは菌体を標的としない治療法が提案できないか模索しています。その1つが感染症を悪化させる炎症応答の制御であり、薬剤耐性黄色ブドウ球菌やアシネトバクター感染に対して感染病態を改善する効果があることを最近明らかにしました(論文準備中)。このような基礎研究に基づいた新規治療標的の探索と新規モダリティの開発を目指しています。

論文:投稿準備中