(1)先進医療とは
新しい医療技術の出現や医療に対するニーズの多様化に対応して、先進的な医療技術と一般の保険診療の調整を図るための制度で、承認を受けると、治療に必要な費用のうち、先進医療の部分は個人負担(保険が効かない)になりますが、通常の診療と同じ(共通な)部分には保険が適用されるようになるので、治療を受ける方の負担が大幅に少なくなるよう配慮されています。 旭川医科大学病院は、高度な技術を持つ医療スタッフと、質・量ともに十分な施設・設備が備えられており、先進医療を承認された病院です。
(2)どのような先進医療が受けられるの?
令和4年11月現在で、厚生労働省で承認された先進医療は84種類ありますが、旭川医科大学病院で取り扱っている先進医療は以下のとおりとなっております。
(3)適応症
ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) 豚脂様角膜後面沈着物若しくは眼圧上昇の症状を有する片眼性の前眼部疾患 (ヘルペス性角膜内皮炎又はヘルペス性虹彩炎が疑われるものに限る) 網膜に壊死病巣を有する眼底疾患 (急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎又は進行性網膜外層壊死が疑われるものに限る) ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術 胚移植を受ける不妊症患者(胚移植後に反復して流産を認めたもの、あるいは奇形精子を伴うものに限る 子宮内膜受容能検査1 胚移植を受ける不妊症患者(これまで反復して着床・妊娠に至らないものに限る) 子宮内細菌叢検査2 不妊症(これまで反復して着床・妊娠に至らないものに限る)、慢性子宮内膜炎疑い又は難治性細菌性腟症
ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)
ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術
子宮内膜受容能検査1
子宮内細菌叢検査2
ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) [実施診療科] 眼科 ヘルペス性角膜内皮炎、ヘルペス性虹彩炎が疑われる片眼性の前眼部疾患、急性網膜壊死、サイトメガロウイルス網膜炎、進行性網膜外層壊死が疑われる網膜壊死病巣を有する眼底病変で、前房水、あるいは硝子体液を採取する。本診断法によりウイルスDNAの同定をおこなう。結果に基づいて適正な抗ウイルス治療をおこなう。当院眼科においては年間約20例の患者が本検査の対象となる。当該技術「ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)」に必要なプライマーとプローブは、ヘルペス1-6型を含む試薬がキット化され市販されているので、これを用いる。
ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術 [実施診療科] 産科婦人科 1)対象及びランダム化・ICSI 適応患者で、ICSI 後に反復流産や着床不全がみられた患者。または、夫が奇形精子症の患者を対象とする。説明後同意が得られた対象を ICSI 群と PICSI 群の 2 群にランダムに振り分ける。 2)卵子・精子の処理・採卵の 3 時間後にヒアルロニダーゼを使用して裸化を行い。第一極体が放出されている卵子を成熟卵とし、ICSI の対象とする。・採卵の朝に採精してもらい 15〜30 分液化させた後マクラーカウンティングチャンバーで一般精液検査を行う。正常形態率は精液の塗抹標本作成後に Diff-Quik で染色を行い、strict criteriaに準じて求める。・精子の処理は Isolate2 層法で行い、再度洗浄した後に沈渣を 0.5ml に調整してインキュベートしておく。 3)HBA アッセイ・調整後精子は ICSI の前に HBA○R Assay を使用して HBA スコアを求める。・ヒアルロン酸がコーティングされているスライドガラスに調整後精子を 5〜10μl滴下し、カバーガラスを被せる。・室温またはインキュベーターでしばらく静置し、ヒアルロン酸に結合している運動精子の割合を求める。 4)ICSI 手技と胚培養・精子の選別、不動化、インジェクションピペット内への充填は ICSI 群では PVP を PICSI 群では SpermSlowTM を使用する。・ICS 群の精子選別は、PVP の上端まで泳ぎ上がった中で形態の良好な精子を培養士が目で見て行う。・PICSI 群の精子選別は、SpermSlowTM と Gamete Buffer のドロップの境界でヒアルロン酸の3次元ネット構造に捕まり限りなくゆっくり動いている精子を選んでいく。・精子の注入を終えた卵子は、single step medium を使用し 30μl でドロップ培養を行う。 5)胚凍結と胚移植・培養 5 日目から 6 日目に胚盤胞になった胚を vitrification 法で凍結保存する。・胚移植は原則として凍結融解単一胚移植にて行い、移植の際はグレードの高い胚盤胞から優先的に移植し両群に偏りが生じないように注意して行う。6)評価項目と評価タイミング・評価する項目と評価するタイミングは以下の通り行う。 @ Day1 正常受精の確認。雌性前核と雄性前核の両方が確認できた胚(2PN 胚)を正常受精卵と判断する。受精率は、正常受精卵数/MU卵子数×100 (%)で算出する。 A Day3 形態評価によりグレード 1 胚率を求める。Veeck の分類に基づき Day3 における胚の分割速度も考慮し、割球の数は 6 細胞以上、割球の大きさが均等で fragment の無い胚をグレード 1 胚とする。グレード 1 胚率は、グレード 1 胚数/正常受精卵数×100 (%)で算出する。 B Day5 Gardner の分類に基づき、胚盤胞の形態評価を行う。3BB 以上の胚盤胞へ発生した割合を求める。胚盤胞到達率は、3BB 以上の胚盤胞数/継続培養数×100 (%)で算出する。 C 妊娠率と流産率 移植後 14 日目前後の血中hCG 濃度が陽性で、移植から 6〜8 週の時点で胎嚢(GS)が確認できた時点で臨床的妊娠と判断し、妊娠率を求める。妊娠率は、臨床的妊娠数/移植数×100 (%)で算出する。臨床的妊娠後、流産が起きた場合は流産率として記録する。流産率は、流産数/臨床的妊娠数×100 (%)で算出する。 D HBA スコア 処理後の精子を ICSI または PICSI に使用する前に HBA○R Assay を用いて HBA スコアを求める。HBA スコアは合計で 200 個の精子をカウントし、ヒアルロン酸に結合した運動精子/ヒアルロン酸に結合した運動精子+ヒアルロン酸に結合していない運動精子×100(%)で算出する。
子宮内膜受容能検査1 [実施診療科] 産科婦人科 吸引用子宮カテーテルを用いて、子宮内膜を採取する。 ホルモン補充周期の場合は、エストロゲン投与により一定の厚さに子宮内膜を肥厚させ、その後、プロゲステロン投与開始後 6 日目(120 時間目)で子宮内膜採取を行う。自然採卵周期の場合は LHサージ後 7 日目またはhCG 投与後の 6 日目に採取するが、自然周期では、血中 LH が不規則に上昇する症例もあり、医師により判断が異なる症例があるため、ホルモン補充周期のみで ERAを実施とする。 採取した子宮内膜を検体とし、次世代シークエンサーをもちいて 236 遺伝子を網羅的に解析し、内膜組織が Receptive(受容期)か Non-receptive(非受容期)かを評価する。 また、Non-receptive の際はどのくらい Receptive までに差があるかも評価を行う。子宮内膜が着床を受容する期間に周期を同期させ、胚移植を行うことで着床率の向上を目指す。
子宮内細菌叢検査2 [実施診療科] 産科婦人科 子宮内膜細胞採取器具を用いて、自然周期では黄体期に、ホルモン補充ではプロゲステロン投与後5-6 日目に子宮内膜を含む子宮内腔液を採取する。 次世代シークエンサー(Next Generation Sequencer:NGS)を用いて、子宮内腔液に含まれる細菌の16S リボソーム RNA 解析を行うことで、Lactobacillus 属の占める割合、その他細菌叢の分布を明らかにする。
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